ACC体験記 FILE035=ふうママさん
<原発部位>耳下腺(右)
<STAGE>Ⅳ
<ニックネーム>ふうママ
<性別>女性
<罹患年齢>53歳
<住まい>東京
<治療>2016年8月 手術
2016年10月 陽子線治療
<病院>国立がん研究センター東病院
<現状>経過観察中 再発、転移なし
<体験記>
2014年秋
右の耳の前に石のような固いしこりがあることに気付きました。触らなければ痛みは感じないが、押すと強い痛みあり。その後会社の健康診断時に医師に相談をするも、顎関節症ではないかと言われ放置。
2015年夏
歯科検診時に再度歯科医に相談し、口腔外科での受診を紹介されました。
自宅近くの総合病院の口腔外科で、MRIをとり両性の腫瘍と診断。半年ごとのMRI検査を行い、大きさに変化がないか経過観察。
しこり以外に自覚症状はなかったが、いま思えばその前年に証明写真を撮った際、 口元が歪んで写ってしまい何度も取り直したことがあり、 すでに顔面神経に影響していたのではないかと思います。
2016年1月
経過観察中の病院で、それほど腫瘍の大きさの変化はないが、いずれ悪性になることも考えられるため手術を勧められ、手術のリスク(顔面麻痺など)の説明をうけました。その際に耳下腺の手術は、口腔外科以外に耳鼻咽喉科でも行っていることを知り、同時にこのままこの病院で手術を受けることに大きな不安を感じました。
2016年3月
改めて自分の顔にある腫瘍について真剣に考え、ネットで耳下腺腫瘍に詳しい医師が自宅の近くで耳鼻科を開業しているのを見つけ、紹介状や今までの検査記録を携えて受診しました。
その医院に手術設備はないため、非常勤で勤務しているお茶の水近くの病院で手術を受け、術後の経過は近くの医院で受けられると説明を受け、先生に執刀していただきたいとお願いしたところ、たまたまキャンセルがあり8月に手術と決定(キャンセルがなければ11月の予定)。
術前の腫瘍細胞診断では良性の結果でした。
2016年8月
右耳の前側から首にかけて15㎝ほど切開し、腫瘍を摘出。手術はおよそ4時間で終了。
手術後、担当医から通常良性の腫瘍は周りとの境目がはっきりとしている。私の場合はいくつかの腫瘍がくっついていて、境目は不鮮明。周りの神経との接触部が変色していたこと、押すと痛みを感じていたことなどから、もしかしたら悪性かもしれないと説明。病理検査の結果待ちとなりました。
1週間で退院し、すぐに仕事にも復帰。結果を待つことに不安もありましたが「うちの家系にガンはいないから、大丈夫」とあまり深刻になっていませんでした。
手術から2週間後の朝、担当医から「結果が分かりました、今日のお昼に病院に来れますか」と電話がはいり、取り急ぎ会社へ午後から出勤すると連絡後、病院へ向かいました。
午前の診察時間の一番最後に呼ばれ、先生から検査の結果、がんであったと告知。
がんの種類は耳下腺の「腺様嚢胞がん」という名前で、顔面神経にも浸潤していると告知を受けました。突然の告知に、かえって取り乱すこともなく淡々と説明を聞いたように思います。
また、先生からは「今後の治療法としては再手術ではなく、陽子線治療がよいのではないか。 国立がんセンター東病院の先生にも相談したが同じ意見だった。早めに国立がんセンター東病院へ行くように」と言われました。
診察室を出て、看護師さんに病院の予約の方法やアクセスを聞いているうちに急に涙がこぼれてしまい、初めて自分のことだと感じたのを覚えています。その後、職場に行き上司に報告「仕事より自分のことを最優先にするように」と温かい言葉をもらいました。
翌日には国立がんセンター東病院を受診。頭頚部外科の先生から、ほぼ同じ説明を受けました。
「再手術をする場合、すでに神経にまで浸潤しているため、かなり大きく切除が必要であり、術後のQOLを考えると、陽子線や放射線治療が良いのではないかと考えている。今後放射線科の医師と連携し、効果の高い治療法を決めましょう」とのこと。
診察が終わり、病院内にたくさんのがん関連の冊子が並んでいたので「腺様嚢胞がん」という名前を探したが、どこにもなく「耳下腺がん」さえ見つからなかったことを不思議に思いました。
当時の私は身近にはがん治療を経験している人がいなく、がんにたくさんの種類があることも、治療にたくさんの選択肢があることも全く知りませんでした。
何度か通院し、重粒子線治療・陽子線治療・放射線治療それぞれのシミュレーション画像とともに頭頸部外科・放射線科の医師の意見を聞き、陽子線治療を受けてみようと考えていた時、ネットではまさんのブログ「耳下腺癌に負けないぞ!」に辿り着きました。しかも「TEAM ACC CAFEやります」の記事で、3日後に同じ病気の人たちが集まると書いてあります。
迷ったすえ、自分も先日告知されたばかりで参加したいと連絡し、第1回目のTEAM ACC CAFEに参加。そして、はまさんはじめ、ゆっこさん、あっつんさん、ぐーみんさん、ヒグさん夫妻、mieさんと出会い、経験談を聞き、一人じゃないという勇気をもらい、 この病気にかかっても笑えるんだと思え、気持ちがだいぶ楽になりました。自覚はなかったのですが、きっと思い詰めていたのだと思います。
2016年10月上旬
陽子線治療を開始。
全26回/65グレイ、週5回の約5週間自宅から病院までは電車で往復5時間の道のりです。病院近くのホテルに滞在することや、電車に乗れないほどの症状が出た場合は入院することも検討しました。
治療の後半には、頬にひどい日焼けのような赤みのあと皮膚がはがれてしまい、専用の薬とガーゼをあて、その上から大きなマスクと帽子で隠して電車に乗りながら最後まで通院で乗り切りました。
その後、11月後半から仕事にも復帰しました。大変でしたが通院してよかったと思います。まるで仕事に行くように毎日電車に乗り、夕方帰る規則的な生活をしたおかげで、ネガティブなことを考える時間もありませんでしたし、電車の中ではたくさんの読書もできました。
治療の途中で皮膚の炎症以外に口内炎は軽度のものでしたが、味覚障害がでてしまい、特に甘いものは好きなはずなのにまずいとさえ思うほどで、なにを食べてもおいしく感じられませんでした。なにが美味しいのか試したところ、塩味が一番今までの味と変わらず感じることができました。身体が欲しているものが美味しいものと思いながら食事をしていました。
今では味覚は90%近く戻っていますが、以前より味の深みやうま味は少しぼやけています。口も3センチしか開くことができないため、虫歯にならないようケアは重要です。
その他、右耳の耳鳴りはわずかですが消えることはなく、耳の自浄力がないので病院で定期的に掃除してもらっています。
現在(2020年1月)
経過観察中で、3か月間隔だった頭部MRIと肺のCTは半年に一度になりました。治療の前にTEAM ACC CAFEに参加させてもらえたことは、私にとって大きな大きな力となりました。いまではスタッフとして参加させもらっています。
腺様嚢胞がん(ACC)に罹患したことは残念なことですが、だからこそ出会えた人たち、経験できたこと、気付けたことはたくさんあります。
いつまで今の状態が続くのかわかりませんが、無理をせず、自分のやりたいこと、自分のできることにチャレンジしていきたいと思います。
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