ACC体験記 FILE028=BIGTOEさん
管理者Hamaより
BIGTOEさんはスーパーマッチョなボディビルダーさんです。
ご自分の身体を美しい筋肉でまとうために健康には人一倍気を遣って生活されてきたBIGTOEさんがある日突然がん告知を受けました。そのがんは気管に発症した腺様嚢胞癌(ACC)でした。気管という臓器は直ぐ側に大きな血管がある為に治療が難航することがあります。BIGTOEさんが選んだ治療方法、そして手術の影響はとても大きなものでした。
以下、BIGTOEさんの体験記を是非ご一読ください。
2017年7月、腺様嚢胞癌、気管癌の宣告を受けました。
職場の健康診断は受けていましたし、自覚症状と言えば半年前くらいから喉に違和感があったのですが、リンパ腺が腫れているのかな?そのうち治るだろうくらいに思っていました。当時、体調は良いくらいでライフワークとして20歳から続けている筋トレは絶好調でした。勿論、暴飲暴食はしませんし、煙草は生まれて以来2本だけ、お酒は晩酌程度でした。そんな健康を売りにしていたボディビルダーがたばこも吸わないのにまさかの気管癌、まさに青天の霹靂でした。
【原発部位】気管 喉頭部(甲状腺、声帯周辺)浸潤
【STAGE】ステージⅣ
【ニックネーム】BIGTOE
【ブログ】
BIGTOEの未来を生きるために!!
癌発覚から入院、手術、退院、今日までの私の日記です。
同じような癌を罹患した方の参考に、勇気付けになればと後世に残そうと書籍化を進めています。
【性別】男性
【罹患年齢】62歳
【住まい】兵庫県尼崎市在住
診断時 埼玉県新座市
療養時 千葉県鴨川市
【診断から入院まで】
<2017年6月20日(火)>
喉の違和感が治らないので近所の耳鼻咽喉科へ。喉にしこりがあるとのことで防衛医大病院を紹介される。
<2017年6月22日(木)~29日(木)>
防衛医大病院(所沢)での検査
・エコー=喉に3.4cmの腫瘍のようなものがある。
・喉の細胞採取
・採血(腫瘍マーカー)=血液は健康体の見本のような数値で、腫瘍マーカーも異常なし。
・CTスキャン=腫瘍が気管内にあることが判明
・内視鏡検査=鼻からカメラを入れて気管内の壁に鳥のささみが張り付いたような腫瘍を目の当たりにする。気管内腫瘍の細胞採取
<2017年7月4日(火)>
・所沢PETクリニックで検査。喉頭部から気管にかけて光っていた。
<2017年7月5日(水)>
防衛医大病院
・胃カメラ検査を受けるが食道内部、胃内部には異常は見当たらなかった。
<2017年7月6日(木)>
防衛医大病院での検査の結果、気管癌、喉頭部癌でステージ4の宣告を受ける。
癌種は、「腺様嚢胞癌」という稀少癌で、効く抗がん剤がない、放射線治療も効果が見込めない。残された治療法は癌に侵された喉頭部から気管をすべて切除する外科手術しかないとのこと。
症例が少ないのではっきりしたことは言えないが、5年後の生存確率40%未満と告げられる。
<2017年7月14日(金)>
国立がんセンター中央(セカンドオピニオン)で松本医師(頭頚部)のセカンドオピニオンを受ける。大筋は防衛医大病院と変わらず。重粒子線が可能性があるかもしれないと聞く。
<2017年7月20日(木)>
防衛医大病院からサードオピニオンとして放射線医学総合研究所紹介依頼をしていただくが、気管内の癌には適用不可との連絡を受ける。
<2017年7月23日(日)>
友人さんよりフォースオピニオンとして亀田京橋クリニック岸本ドクター紹介される。
<2017年7月28日(金)>
友人より紹介された亀田京橋クリニック(銀座一丁目)にて岸本誠司ドクター、野守裕明ドクターの診断を仰ぐが、やはり、外科手術しか治療法はなく、気管内の癌が10cmと大きく、気管の3分の2近くを塞いでいるため、手術をするにしても時間的余裕がないことを告げられる。隣接する食道への浸潤の疑いあり。
手術は、喉頭部(声帯、甲状腺、周辺リンパ節、周辺筋肉)を全摘出。気管孔制作は鎖骨、胸骨、第一・第二肋骨を切除して行われ、気管の大部分を切除、胸に気管孔と言う呼吸をするための穴が開けられ、術後は口、鼻ではなく気管孔で息をすることになる。声、臭覚を失う。息んだり出来ないので重量物を持てなくなる。風呂に入れなくなる。水泳も出来ない。営業の仕事も出来なくなる。歌好き、風呂好き、筋トレが趣味の私にとっては最悪の事態。
開胸をして食道にも癌が浸潤していれば、食道も切除して腹を切り小腸を使って食道再建術を行なうため、手術時間は16時間以上に及ぶかもしれない。
手術をしないで放置した場合どうなるかを聞くと、3~4か月くらいで気管が癌で塞がり窒息の可能性が高い。そうなると手術も出来ない、1週間で返事をとのことだった。
<2017年8月4日(金)>
亀田京橋クリニック手術決意を告げる。
<2017年9月11日(月)>
千葉県鴨川市の亀田総合病院に入院、検査。
【手術】
<2017年9月12日(火)>
千葉県鴨川市の亀田総合病院で手術
【主病名】
喉頭、気管癌
【腫瘍範囲】
輪状軟骨から第10軟骨輪
【手術実施日】
2017年9月12日 09:52~18:13(8時間21分)
【診療科】
呼吸器外科 野守医師、耳鼻科 岸本医師
【術前診断】
気管、腺様嚢胞癌、甲状腺浸潤(+)、食道浸潤疑い
腫瘍範囲:輪状軟骨から第10軟骨輪
【手術診断】
同上、食道浸潤なし、完全切除
【麻酔種類】
全身麻酔(分離肺換気)+硬膜外麻酔
【術式】
気管切除、喉頭摘出、鎖骨、第一、第二肋骨切除、縦隔気管孔作製
【出血量】
260ml
【輸血量】
0ml
◎開胸の結果、食道への浸潤がなかったため、16時間という予定の手術時間は約半分の8時間21分で済みました。待機していた消化器外科のドクターの出番はなかったことになります。
【一時退院から再入院】
<2017年11月12日(日)>
一時退院(術後2か月)(鴨川から新座市の自宅へ)
<2017年11月13日(月)>
夜、シャワー中に息苦しくなり、埼玉病院へ救急搬送(1回目)
<2017年11月14日(火)>
夜、大きな痰が小さくなってきた気管孔に詰り窒息寸前
<2017年11月16日(木)>
息苦しくなり、埼玉病院へ救急搬送(2回目)、帰宅後、気管孔に詰り窒息寸前
<2017年11月17日(金)>
京橋クリニック外来待合室で息苦しくなり、岸本医師、野守医師が、麻酔なしで緊急チューブ挿入にて気道確保処置。その後、救急車で鴨川亀田総合病院に搬送。2度目のICUへ。合併症である気管孔の狭窄によるものだった。
【放射線治療】
<2017年11月22日~12月22日>
(照射部位)輪状軟骨~気管分岐部リンパ節領域+ブースト(腫瘍床)
(予防域)照射回数 20回、1回照射量 2レイ、総照射量 40グレイ
(ブースト)照射回数 5回、1回照射量 2グレイ、総照射量 10グレイ
(偶発症)放射線による皮膚炎、食道炎、血痰が増えたことによる呼吸困難が起こった。
<2018年2月12日(月)>
退院。退院後もいつどんな合併症が起こるかわからないため、埼玉から住居を亀田総合病院がある千葉県鴨川に移す。退院後は、定期的に外来診察、CT検査、採血、気管支鏡検査を受ける。また、手術の後遺症で右肩の機能が悪化、スポーツ医学外来、リハビリを受けることに。
<2018年3月29日(木)>
依然として、気管孔にはチューブが入ったままであるが、一度抜いて様子を見ることに。しかし、狭窄が始まり朝9時から緊急外来へ。チューブの再挿入処置を受ける。今後、少なくとも1年はチューブは抜けないと告げられる。1日4回の加湿のためのネブライザーに加えて、自身でのチューブの脱着、洗浄が欠かせない状況が続くことに。
<2018年9月12日>
6月で勤務先への復帰も諦め退職したため、手術から1年目のこの日に生まれ故郷の兵庫県へ引っ越し。
引越にあたっても、私が受けた手術は、日本でも数人の医師しか出来ない危険な手術であり、前例が少ないことから、引っ越し後に引き続いて診察、治療にあたってくださる病院、医師が見つからないことに悩まされました。
結局、かって住んでいた三田市ではなく、受け入れ先の病院がある尼崎市へ引っ越しとなりました。
現在は、尼崎医療センター、神戸市民病院で引き続き外来検診で、CT、MRIなどで再発、転移の有無を確認しながらの経過観察中です。気管孔にチューブが入った状態であるために起こるとされる肉芽とそれにからむ痰処理、気管孔の慢性的な炎症も悩ましいところです。自宅で1日4回のネブライザーと2日に1回のチューブ交換、洗浄が必須です。チューブも医師と私自身の手作りで、医師と相談しながら試行錯誤の毎日です。手術で骨や筋肉を切除したことで、手術、放射線を受けた首から胸にかけての組織の硬化、肩の痛み、腕が上がらない、後ろに回せないと言った機能障害にも悩まされていますが、確かに生きています。
先人がどのような術後対応をしてどのように過ごされているのか?先人の知恵を借りることが出来ないかとブログなどで探していますが未だ出会っていません。
ACCを罹患したことで、今まで当たり前と思っていた健康の大切さ、家族、親戚、親友たちが居る幸せを痛感しました。また、ACCという稀少癌の患者さんは日常生活では出会うことが困難なのですが、はまさんが立ち上げられたTEAM ACCを通じて知り合った友人たちと情報を時間を共有することで前向きに生きる勇気をいただきました。今後はACCという現実と向き合いながら、生かされた命に感謝しながら、出来る事をやり1日1日を積み重ねるように前進したいと思います。
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