ACC体験記 FILE027=KIMさん


管理者 Hamaより

「腺様嚢胞癌(ACC)には抗がん剤が効かない」。

腺様嚢胞癌(ACC)サバイバーであれば誰もが聞いたことがある呪縛のような言葉。しかし、抗がん剤治療にトライし奏功している方もいらっしゃいます。この度、体験記を投稿していただいたKIMさんがそのおひとりです。現在も抗がん剤治療を続けているKIMさんがご自身のこれまでの経験の詳細を体験記にまとめてくれました。同じ境遇のボクたちにとって光明と言えるKIMさんの体験記を是非ともご一読ください。出来れば医療従事者の方にも読んでいただきたい体験記です。




<原発部位>顎下腺(左)

<ニックネーム>KIM

<性別>女性

<罹患年齢>57歳

<住まい>東京都

<治療>

 2015年6月 左顎下腺摘出手術。

 2017年4月 化学療法開始。

 現在、週1回の外来で、化学療法を受けている。

<病院>

 国立がん研究センター中央病院

 →  2017年2月 済生会中央病院へ転院

<体験記>

▼2015年初め~6月手術受けるまで

2015年の初め、左顎の下に2~3センチくらいのグリグリがあるのに気づく(痛みは全くなし)。もともと、私は肘とか足の甲などにガングリオンができやすい体質で、今まで放っておいてもそのまま消えたり小さくなったりしていたため、おそらくそんなものの一種だと思っていた。でも、なんとなく気になり、会社近くの耳鼻咽喉科を受診。耳鼻科的には特に悪いような所見はないが、歯からきているものかもしれないので、一度歯科に診てもらう方がいいかもしれないという診断だった。1年前にかかっていた歯科の先生が急逝し、歯の治療もそのままになっていたので、できれば、検査も治療もしてもらえるような病院を紹介してほしいとお願いし、紹介状を書いてもらう。

2月24日、紹介状を持って某大学病院の口腔外科外来を受診。エコー検査では、おそらく顎下腺炎だろうということで、うがい薬と2週間分の抗生物質を処方される。2週間後の診察も同様で、もう少し抗生物質を飲んで様子をみましょうということだった。

しかし、一向に小さくなる気配はなく、結局4月17日MRI検査を受け、1週間後、画像診断の結果、腫瘍であることが判明する。

私は、高血圧症があるため、近所の医院に月に1度通い、降圧剤を処方してもらっている。MRI検査のときも、血圧が高く造影剤の検査はできなかった。腫瘍であることは、4月から、新しく担当になった若い女性の先生から知らされたが、「まずは、かかりつけの先生に血圧のことを相談してください。血圧が安定したら手術をしましょう」と、すぐに手術をする必要性はなさそうな口ぶりだったので、少し安心する。

とはいえ、やはり気にかかり、近所の先生に相談に行く。そこでの診断は、「これは頭頸部の疾患と思われるから、きちんと診てもらった方がいい」とのこと。今度は同じ病院の「頭頸部外来」に紹介状を書いてもらい、翌日訪ねる。すぐに「穿刺吸引細胞診」を受けたが、結果は、5段階でいうと3くらい、要するにはっきりわからないという診断だった。いずれにせよ、そのままほっておいて小さくなるものではないので、取ったほうがいいということで手術が決定。5月に手術前検診などを受け、6月19日に入院、6月22日に摘出手術を受けた。

手術前説明では、まず悪性ではないでしょうということだった。それを前提にしつつも、稀に悪性だったり、最悪、顔面神経まで広がっている場合もあるという。しかし最初に言われたのが、「まず悪性ではない」ということだったので、それを信じて疑わなかった。

実際、手術も3時間程度で終わり、さほどの痛みもなく、経過も順調で数日後には退院する。今思えば、入院中は、普段忙しいだけにいい骨休めになるくらいの気楽な気分だったように思う。


▼2015年8月 腺様嚢胞癌宣告

その後、耳鼻科で数回、診察を受けるが、摘出した腫瘍の病理結果がなかなかでない。なぜ時間がかかるのだろう?保険請求にも診断書が必要なのにと思っていたところ、8月6日、やっと結果が出て、そこで「腺様嚢胞癌」の宣告を受ける。その時の先生の説明は、「がんといっても、とにかく進行は緩やかですから、10年はつき合ってください」と、今思うとなんだかふんわりとしたものだったように思う。とにかく、自分ががんの宣告を受けるとは全く、予想していなかった。「腺様嚢胞癌」とは、どういう字を書くんでしょうか?と、メモ用紙に病名を書いてもらうくらい、初めて耳にする病名だった。

保険会社に提出する診断書には、腺様嚢胞癌ステージ3と書かれていた。

次の診察は、詳しい話を聞きたいということで家族と一緒に行くが、そこで、「ペット検査をしなくていいんでしょうか?」、「転移はないんでしょうか?」と言う質問に、「少し大きめに切り取り、破断面にはがん細胞はなかったので、取り残しもないと思います。まず大丈夫でしょう」ということだった。それから、1年間、月1回の割合で通院。毎回、顎下腺のまわりをエコー検査した。10月27日に1回レントゲンを撮ったが、特に何も言われなかったので、その時点では異常はなかったのだと思う。


▼2016年6月(術後1年) 肺、心臓転移発覚

9月 国立がん研究センター中央病院へ転院

術後1年経ったということで、6月7日にCT検査を受ける。そして、6月21日、肺の多発転移と心臓にも転移していることが発覚。心臓については、6月30日に心臓専門のクリニックで画像診断検査を行う。

自分ががんに罹患してると知ったときも辛かったが、多発転移しているということはそれ以上に辛かった。何とか治療法はないものかと、7月は国立がん研究センター東病院、9月には国立がん研究センター中央病院でセカンドオピニオンを受ける。家族や知人と色々相談した結果、国立がん研究センター中央病院「頭頸部腫瘍科」に転院を決め、そこに、月1回、通うことになるが、今、何か症状があるわけではないので、経過観察しかないとのこと。それは今まで診ていただいたどの先生方も口を揃えておっしゃることだった。


▼2017年2月 済生会中央病院に転院

暮れも押し迫った12月28日に国立がん研究センター中央病院でCT検査を受け、翌1月10日、結果が出て、肺に転移したがん、心臓に転移したがん共に通常の腺様嚢胞癌の進行以上に増大していることを知る。また、「心臓のがんは症例が少ないため、がん研は心臓疾患には弱い。心臓を専門とした病院で診てもらったほうがいい」ということで、国立がん研究センター中央病院の紹介で、済生会中央病院を受診することになる。まずは、2月4日循環器科の診察を受け、その後、再度心臓画像の検査を行った。その結果をふまえた上で、3月25日、心臓血管外科の先生の診察を受けたのだが、「このまま放っておくと心臓を圧迫して心不全を起こす可能性がある。心臓のがん手術というのは非常にリスクが高いが、一か八かやるしかない」との判断だった。少しでも早いほうがよく、4月中にということで、手術が決定。かなり、深刻な状況だった。


▼2017年4月 化学療法開始

4月12日から、15日まで手術のための検査入院。そこで、CT検査を受けるが、その結果、肺転移がんが急速に大きくなっていることが明らかになる。思えば、2月くらいから空咳が、ずっと続いていた。「これで手術をしたら、一生人工呼吸器をつけることにもなりかねない。まずは、肺に転移したがんの治療をしましょう」ということになり、腫瘍内科の先生から、化学療法(抗がん剤治療)の説明を受ける。そもそも心臓の転移がんで紹介された病院だったが、肺転移がんの治療もこの病院にお願いすることに決める。結局、心臓の手術はペンディング。

そして、4月24日から、化学療法が始まった。治療はまずは1週間入院して行い、その後の2週間は週1回、外来で投与。それを1クールとして、6クール行う。使う抗がん剤は、シスプラチン、セツキシマブ(アービタックス)、5FU(フルオロウシル)の3種類。

4クール目が終わった時点のCT検査では、抗がん剤が非常によく効いて肺転移がんが小さくなってますよと、先生から嬉しい報告をいただく。

結局、4月から、8月までで、6クールの治療は終了。その後は週1回、外来での抗がん剤(アービタックス)治療を続け、ありがたいことに転移した肺がんは今も縮小している。


▼2018年1月~現在

残念ながら、今年の1月15日に受けたCT検査で、肺転移がんと共に一時は縮小していた心臓転移がんが、大きくなっていることが明らかになる。また、心臓の転移がんは心膜ではなく心臓の筋肉にまで入り込んでいるため、手術はできない、つまり完治は望めないとのこと。それについては、抗がん剤の種類を変えて様子をみようということになる。そして、1月からアービタックスにパクリタキセルが追加され、週1回、外来で投与し現在に至る。

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基本的な認識として、腺様嚢胞癌は、抗がん剤が効かないと言われていますし、私も経過観察以外ないと諦めていました。しかし、私の場合、進行速度が早くて、抗がん剤しか治療法はない、つまり、それ以外の選択肢はなかったのです。

ただ、幸運にも、化学療法が非常に奏功して、肺に多発転移したがんは縮小していますし、実際に消えたものもあります。一概には言えませんが、腺様嚢胞癌に抗がん剤は効かないと決めつけることはないと思います。私のような例もあるのですから。

また、抗がん剤と言われたときにまず、頭に浮かんだのは、副作用のことでした。嘔吐、吐き気、皮膚障害、脱毛……。そのなかで、私が、経験したのは、味覚障害、便秘、皮膚障害、脱毛でした。もちろん、辛さがなかったわけではありませんが、耐えられないような苦痛はなかったです。

抗がん剤の副作用も必要以上に恐れることはないかもしれません。今はいい薬もありますし。

ただし、どちらも、大前提として、『個人差がある』というのは否めませんが。

今、週1回の外来で化学療法を行い、多少の副作用はあるものの、仕事をして、たまに旅行したり、お酒を飲んだり、趣味のダンスをしたり、ほとんど、普通と変わらない生活を送っています。最初の化学療法6クールを終え、やっと生えてきた髪は、抗がん剤の追加でまた抜け始め、ウィッグは手離せませんが。

私は、これからもずっと化学療法を続けていくことになると思います。でも、希望を捨てずに、ポジティブに生きていきたい。

今、はまさんはじめ、同じ病と戦っているACC仲間、私にとって大切な大切な同志です。これからも情報共有しながら、励まし合っていきましょう! いつか、画期的な治療法が確立されることを祈りながら…。

2018年4月17日UP



管理者Hamaより補足

掲載することは出来ませんがKIMさんから抗がん剤治療前後のCT比較画像を見せていただきました。その結果は一目瞭然。確かに肺に多発転移していた腫瘍は驚くほど小さくなっていました。KIMさんの体験を通してあきらめない姿勢の大切さを再認識いたしました。KIMさんがおっしゃっているように、TEAM ACCとして情報を共有しながら励ましあって生きていきたいと思います。

TEAM ACC

~腺様嚢胞癌の仲間と生きる~ ようこそ「TEAM ACC」へ。 ACC=Adenoid Cystic Carcinoma 腺様嚢胞癌 腺様嚢胞癌に罹患した方と家族のために体験者が チームとなり共に生きるためのサイトです

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